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セルフメディケーション税制とスイッチOTC

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セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について

最近、「セルフメディケーション」という言葉を耳にしたり、薬局で目にしたりする機会が増えたと思いますが、セルフメディケーションとはなんでしょうか。

セルフメディケーションは、WHOにおいて「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されています。処方箋がなくても薬局なので購入できる医薬品をうまく利用して病気の予防や体調管理を行い、自分の健康を自分自身で守ることもセルフメディケーションです。
急速な高齢化が進むなか、国民の医療費は今後も大きくなっていきます。膨らみ続ける医療費を抑えながらも、国民の自発的な健康管理や疾病予防の取り組みを推進するため、国は2017年1月より、所得税法上における医療費控除の特例「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)」を施行しました。

セルフメディケーション税制は、薬局で購入できる医薬品の購入費用が高額になったとき、一定の条件を満たせば医療費控除の特例として所得控除を受けることができる制度です。

対象の医薬品は、2021年12月末までは、スイッチOTC(後述)のみでしたが、2022年1月より、「外用鎮痛消炎薬」、「解熱鎮痛薬」、「鎮咳去痰薬」、「かぜ薬」、「鼻炎用点鼻薬」、「鼻炎用内服薬」、「抗ヒスタミン薬又はその他のアレルギー用薬としての効能又は効果を有すると認められるもの」も追加され、さらに利用しやすくなりました。
ただし、医療費適正化効果が低いと考えられ、対象から除外されたものもあります(2025年末まで経過措置期間、2026年1月より除外実施)
この制度の対象となる具体的な医薬品は厚生労働省のホームページで確認することができます。

「セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について」(厚生労働省)

令和3年度税制改正後 セルフメディケーション税制対象成分(2021年9月27日時点)

メーカー等の自主的取り組みによって、対象医薬品のパッケージに税制の対象であることがわかる識別マークが掲載されています。

また、レシート等の証明書類にも①税制対象医薬品の前にマーク(例えば「★」)をつけることや、当該マークの付いている商品が税制対象品目である旨(例えば「★印は税制対象品目」)をレシートに記載することが義務付けられています。

スイッチOTCについて

では、2021年12月末まで、セルフメディケーション税制の唯一の対象だった「スイッチOTC」とは、どういうものかご存じでしょうか?

「OTC」という言葉は、今ではずいぶんと浸透してきているのでご存じの方も多いでしょう。 医薬品には、医師の処方箋に基づき提供される「医療用医薬品」と、薬局やドラッグストアで買える医薬品がありますが、OTCは後者です。OTCとは “Over The Counter(カウンター越しの)” の略で、カウンター越しに薬を販売する形に由来しています。OTC医薬品は、もともと「市販薬」、「大衆薬」、「売薬」などとも呼ばれてきました。「OTC医薬品」は、「要指導医薬品」と「一般用医薬品」に大別され、「一般用医薬品」は、さらに「第1類医薬品」、「第2類医薬品」、「第3類医薬品」に分けられます。

OTC医薬品の分類

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「第2類医薬品」のうち、より注意を要するものを「指定第2類医薬品」という

「スイッチOTC」という言葉は、まだまだ馴染みがないかもしれません。
スイッチOTCとは、医療用医薬品として用いられていた成分が、OTC医薬品に転用(スイッチ)された医薬品のことです。
スイッチ成分として認められるのは、医療用医薬品としての使用実績が長く、副作用が比較的少なく安全性が高い成分ばかりです。

★スイッチOTCを利用するメリット

医療機関が開いていない時間でも購入できることもある。
医療機関に行けなくても、近くの薬局で購入したり、インターネットで購入できるものもある。
医療機関に行く時間を抑えることで、時間を有効利用することができる。
場合によっては費用を抑えることができる。
冒頭に書いたように、スイッチOTCはセルフメディケーション税制対象です。
是非、上手に利用してください。

1年間(1月1日~12月31日)に自己負担した対象の市販薬の購入費が12,000円を超える場合、確定申告をすることで、その超えた分について所得から控除できます。

代表的なスイッチOTC

医療用との違いなど

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※2 アンテドラッグとは、患部(局所)で強く作用し、全身に吸収されてからは、速やかに分解するよう設計された薬剤です。その代表的な薬が、アンテドラッグステロイド成分です

医療用医薬品との違いなど

上の表からもわかるように、同じ成分が同量配合された全く同じものであっても、医療用医薬品とOTCとでは、効能が違うものがあります。つまり医療用医薬品では使えてもOTCでは使えない効能が結構あります。「使えない」というのは「承認されていない」ということです。医療用医薬品のように、医療機関に受診した上で出されるものと違うので、それだけリスクの低い範囲にしか使えないのです。年齢制限がOTCの方が厳しいものがあるのも同じ理由です。また、量も医療用医薬品の使用量を超えない範囲と決められています。使用できる期間もOTCの方が短く決められているものが多いですが、理由は受診せずに自己判断で服用するので、短期間で効果が出なければ、別の病気が潜んでいることも考えられるため早めの医療機関受診を促すためです。

医師は、症状に応じて複数種類の薬を組み合わせて処方することができるため、医療用医薬品のほとんどは、1つの有効成分だけでできています。一方、OTCは、総合感冒薬や胃腸薬のように、1つの薬でいろいろな症状に対応できるよう、合理的にあらかじめ複数の有効成分が配合されているものが多いのが特徴です。スイッチOTCも、ガスター10やロキソニンsなどのように医療用と全く同じ、単一成分のものもありますが、複数成分が入っている総合感冒薬や胃薬、目薬などが多いです。

(例)痰を切る成分 「アンブロキソール塩酸塩」(医療用先発:ムコソルバン)⇒咳を鎮める成分や、熱を下げ、喉等の炎症や痛みを鎮める成分、くしゃみ・鼻水・鼻づまりを抑える成分などを加えて、【総合感冒薬】にスイッチ成分の「アンブロキソール塩酸塩」が入っている総合感冒薬の例

スイッチOTC スイッチOTCに入っている成分と効能
エスタックイブファイン   風邪の諸症状の緩和 (総合感冒薬) イブプロフェン(イブプロフェンもスイッチ成分) 熱を下げ、喉等の炎症や痛みを鎮める アンブロキソール塩酸塩 喉にからまる痰を出しやすくする ジヒドロコデインリン酸塩 咳を鎮める dl-メチルエフェドリン塩酸塩 咳を鎮める ヨウ化イソプロパミド 鼻水を抑える クロルフェニラミンマレイン酸塩 くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状を抑える 無水カフェイン 頭の重い感じをやわらげる アスコルビン酸(ビタミンC) 風邪で消耗しがちなビタミンを補う チアミン硝化物(ビタミンB1硝酸塩) 風邪で消耗しがちなビタミンを補う
パブロンSゴールドW   風邪の諸症状の緩和 (総合感冒薬) アンブロキソール塩酸塩 喉にからまる痰を出しやすくする L-カルボシステイン 気道粘液・年末を正常な状態に近づける ジヒドロコデインリン酸塩 せきを鎮める アセトアミノフェン 熱を下げ、頭・喉等の痛みを鎮める成分 クロルフェニラミンマレイン酸塩 くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状を抑える リボフラビン 風邪で消耗しがちなビタミンを補う
これらの総合感冒薬には、「アンブロキソール塩酸塩」が医療用と同量(1日当たり)配合されています。また、同じくスイッチ成分であるイブプロフェン(熱を下げ、喉等の炎症や痛みを鎮める)も同時配合されているものあります。(エスタックイブファイン、コルゲンコーワIB錠TXα、パブロンエースPro、パブロンメディカルT など) これらの総合感冒薬は、処方薬でよく出される組み合わせが幅広くチョイスされています。このような配合薬と他の薬を併用する場合には、注意が必要です。 例えば、イブプロフェンが入っている総合感冒薬と一緒に、頭が痛いからと、ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛剤を併用すると、同じような働きの成分が重複し、効きすぎたり、副作用が強く出る可能性もあり、十分な注意が必要です。 また、スイッチ成分の配合量については、下記のように決まっています。 医療用医薬品の使用量を超えない範囲 一般用医薬品としての有効性・安全性が認められる配合量 「要指導医薬品」は、医療用医薬品からOTC医薬品に転用(スイッチ)されたばかりの薬のことです。OTC医薬品として新しいうちは、まだ取扱いに十分な注意が必要で、より安全に使用されるように、購入の際には必ず薬剤師から対面での指導や情報提供を受ける決まりになっています。そのため、インターネットでの購入はできません。 原則3年間、「要指導医薬品」として販売された後、副作用等の調査を実施し、安全性に問題がなければ「一般用医薬品(第1類)」へ移行されます。 「一般用医薬品」は、薬局・薬店だけでなく、インターネットでも購入することができます。

ダイレクトOTC

スイッチOTCに対して「ダイレクトOTC」というものもあります。

スイッチOTCとの違い

・スイッチOTCは、長い間、医療用医薬品として使用され、効果や安全性が認められた成分を転用(スイッチ)したものです。
・ダイレクトOTCは、日本で医療用として使用実績のない成分がダイレクトに(直接)OTC医薬品として販売されているものです。
医療用としての使用実績があるかないかが大きな違いです。
もちろん効果や安全性の面でも厚生労働省から承認されたものであり、日本での使用実績がないだけで、海外では既に使用されている成分もあります。

代表的なダイレクトOTCに、発毛効果を持つ「ミノキシジル」があります。「ミノキシジル」は、ダイレクトOTCの第1号でもあります。
「ミノキシジル」は、1960年代にアメリカで血管拡張剤として開発された成分で、医療用医薬品としては使用されませんでしたが、後に血管を拡張させて血流を良くすることで、育毛、脱毛症改善効果が発見されました。そこに着目し、現在では脱毛症を改善する効果の外用剤として販売されています。医療機関でも使われていますが、すべて自費診療の対象となっています。ダイレクトOTCは1999年より「リアップ(RiUP)」という名前のシリーズで販売されています。
リアップは第1類医薬品です。

風邪の引き始めや、季節性のアレルギー症状など軽い体調不良の場合に、スイッチOTCをはじめとした一般用医薬品をうまく取り入れることは、自分の健康を自分自身でしっかりと守る「セルフメディケーション」の実行につながり、その積み重ねが、やがては国の膨らみ続ける医療費問題解決への糸口になるかもしれませんね。

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